2017年11月7日火曜日

自分の裁量で動かせない人生。

この祝日をはさんだ週末を高知で過ごした母が、日曜日に腰を痛めて帰ってきた。「おばあちゃんにね、抗うつ剤が処方されて、カラダに全然力が入らなくなって、車の乗り降りで支えようとしたら、ぐきってきた」とのことで。高齢女性にありがちな骨粗鬆症で、すでに腰に、如何ともしがたい圧迫骨折を抱える母。どうやら骨の「発作」として現れたらしい。私は祖母に抗うつ剤として何が処方されたのかが気になって仕方がない。抗うつの第一選択はSSRIだけど、SSRIでそんな脱力(無気力・鎮静)があったっけな。それともまさか、三環系??

そもそも、祖母に抗うつ剤が適用された理由は、自殺企図。電源コードを首に巻きつけて死のうとしたらしい。ただ、家でもそれと近いことはしょっちゅうだったし、おそらく、今回もそれと同じだと思う。今、祖母は介護施設に入ってしまっているので、見つけた誰かは慌てたんじゃないだろうか。でも、祖母のそういう行動は、私からは、注目を集めたいがためのパフォーマンスにしかみえていない。祖母はいつも、「誰からも注目されていない」と思っている。自分の役割や自分の存在意義に迷いを抱えている。祖母の言動のほとんどはその系統から流れて来ていたし、だから、その「パフォーマンス」自体はいつものことで、何の驚きもない。むしろ、祖母の場合、何か行動に突発的に表わそうとする様子は鬱でなく躁だとすら。

どこか陰鬱でメソメソしていて、責任を取ることをせず(できず)、いつもカラダのどこかに不具合があり、カレーとかハンバーグとか牛乳とかチーズみたいな新しい食べ物を絶対に口にせず、家族と同じ食卓には頑なに座ることはなく、外出をせず、家事をするでもなく、夏でも常にコタツに入り、どこで買ってきたのかわからないけど、お菓子だけはいつもふんだんに食べている。それが私のおばあちゃん。私が子どもの頃からずっとそうなので、「おばあちゃん」とはそういうものだとずっと思ってきた。だから、ヨソの家に行ったり、母の実家に行くと、ハツラツと働く「おばあちゃん」の姿が眩しく、洋風の新しい食事を家族と喜んで食べる姿も勇ましく、「こんなおばあちゃんもいるんやな」と羨ましく思ったもんだった。

外側だけを眺めると、幼少から今に至るどの断片を切り取っても世間的には「シアワセなおばあちゃん」。でも、当の本人はいつも不幸せがっている。祖母のカラダの不調のほとんどはその象徴なのだとも思う。兄弟の多い貧しい家庭から、親戚の家に跡取りとして引き取られたこと。いきなり裕福な暮らしになって、周囲の子が誰一人持たないランドセルを背負えたこと(よくこの話をするので、きっと、とてもイヤだったのだろう)。それに、一番大きいのは、祖母の人生を通じて、経済的に、祖母が握れるものは何もなかったこと。自由に使えるお金がない、というのは、自己決定権がない、ということにもつながる。好きな洋服や雑貨を買う、なんてレベルの話ではなく、たとえば、ただ醤油をひとつ買うのにも、誰かからお金をもらわなければならない。祖母がいつも持っていたお菓子は、誰かから与えられたものなのだ。働くのにお金がない、ではなく、理由はわからないけど、働けない(いや、参加をしない)から自分の裁量で使えるお金を持てないのだ。そこへきて、家でも外でもハツラツと楽しそうに働き、家計を支える嫁の存在。ちょうど時代の変わり目で、粛々と家にいた自分への疑問が湧くのを止めようがなかったのではないか。

数年前に母の論文を手伝って、過疎地における移動手段についてのアンケートを集計したことがある。それは、過疎地有償運送の効果の測定でもあった。有償運送によって生活満足度は向上したはず、との予想は大きく外れて、安い価格で、乗り合わせで運んでもらうことへの申し訳なさがより際立っていたことが衝撃的だった。「申し訳なさ」は、残念ながら、そっくりそのまま「ありがたさ」につながるわけではない。むしろ自分の不甲斐なさ、役に立っていない感じを助長することがある。そういうふうに感じられるアンケートの回答主のほとんどが、運転免許を取得したことのない高齢女性に多い印象を受けた。どうして運転免許を取らなかったのか。こんなにもクルマが普及すると思っていなかったかもしれないし、免許取得は今よりももっとお金のかかることだったのかもしれない。こんなにも過疎が進んで、街から店や学校や「ご近所さん」が消えてしまうなんて思ってなかったのかもしれない。とにかく、今現在、そもそも体力的に、自力で遠くへ行くのは難しい。たとえば豆腐一丁を買うことすらも、人の足に頼るしかない。「あ、忘れてた」なんて思いつくままに移動できること。これも自己決定権のひとつだ。

自分の裁量で動かすことのできない人生。私には全く想像ができないけど、祖母の精神のほとんどはこれで規定されているように思える。申し訳ないけど、とても興味深い。いつか祖母の話をまとめたいなあと思うけど、しかしながら話を聞くのも、ひとつ、強い気合いの必要な相手なだけに。その周辺の、祖母の娘たちの話も聞きたいなあと思うけど、こちらも、これまたひとつ、強い気合いが必要なだけに。


母の腰が悪すぎて、動いてもらうのが申し訳なく、私は訥々と普段より増えた家事仕事をこなしている。それでもなお、「ねー、ちょっとは同情してよ」とニヤニヤする母を見て健康な人やなーとホッとして、「やること増えて、むしろこっちが同情してほしいわ」となんとなくニヤニヤしながら、軽く本音を伝えてみたりして。私たちは、何のおもしろみもない健康な家族です。

2017年10月14日土曜日

I can't leave you

I know you're just only so a busy businessman, enough.
But it's your fault leaving me alone without showing our direction.
I think it had been unnecessary to think too much
at least in the beginning of the period.
I think we'd had to do just only something on a stupid whim.
There is no one but you right now,
so I give you small space in my heart for a while.
Please go out as soon as possible.



Hang up tha phone
Hop in your whip
Boy, I'm home alone
In this empty ass crib
And I ain't goin' nowhere
'Cept somewhere with you
'Cept somewhere with you
Drive slow, remember patience is a virtue
There you go at my front door
I ain't goin' nowhere
'Cept somewhere with you
-----"Hang up tha phone" by Kiiara

You always know my time to want to leave you.
And you send me your voice or words or photos innocently,
I can't say no to you, I can't do anything but accept of you,
after all I can't leave you.



Wrap both your arms around my body
And dance like you are with nobody
I could not care what anyone thinks
Definitely not after those drinks
I have found my weakness in the shape of you
There's a kind of sweetness oozing out of you
-----"JUST DANCE" by HONNE

2017年10月7日土曜日

今度こそは、と思ったんだけどな。

好きな人は離れたところに住んでいる。て言ってもクルマでたかだか2時間半だし、多少の無理を承知なら、そんなに会えないこともない。私は会いたい。高知に帰ることにすれば、そこは通り道だし、なんとなく無理が無理じゃなくなる気がする。だから、高知に帰る頻度は増えた。この1か月の間に3回も。はじめは会ってくれたけど、ここ最近の2回はボウズ。「無理しなくていい」って言うけど、無理な距離を「無理しよう」って思わずにどう会うのだろう。そこまで会いたいとも思われていないのかもしれない。はじめは毎日のようにあった電話が、今週は2回。ラインを送り合う回数も激減。もう飽きられてしまったのかも。物理的な距離が、いよいよ精神的な距離に変化しようとしている。おかげさまで気持ちはめちゃめちゃ不安定。同居中の母親への理不尽な八つ当たりはそのせい。それに、ケータイがずっと気になって仕方ない。広がった距離は、「相手を失うことの寂しさ」から「何もないことの寂しさ」へ転化しそう。相手がどんな顔をしていたのか、もう忘れてしまいそう。どんな声で、どんなトーンで、どんな話をしていたのかも、もう忘れそう。

このところの学校の講義では、これまでやっていたことの復習をずっとしている。たくさんの基本的事項の確認は、バラバラだった知識をつなげていく。おかげで糖代謝、尿素回路にアミノ基転移反応、脂質の合成や代謝、核酸合成経路まで、単なる暗記でニガテだなと思っていた生化学のアレコレが、もうほとんど完全に覚えられた。それに、もうちょっとで、これらに関する疾患やクスリも整理できそう。覚え方のコツは、どこに「無理な反応」があるかを知ることだったりする。化学反応の基本は「より安定な状態を目指す」ことにある。化学反応自体が簡単で、できあがるもののエネルギーが低いなら、反応は自発的にバランスをとって簡単に起こる。でも、もともとの物質が安定で、反応すること自体に多くのエネルギーを必要とする場合、できあがるもののエネルギーがオリジナルより低かったとしても、その反応は進みにくい。そんなときには、熱や酵素など、反応を進めるための工夫が必要。つまり、カラダの中での「無理な反応」がどれかを知れば、その反応をさせるために必要なものがわかる。この工夫の仕方を間違えてしまったら、思ったのとは全然別のものができあがったりもする。

私たちの場合、お互いに一人でいた時間が長過ぎて、そもそも、もうそれで安定な状態になっている。だから、何か変化するには特別なエネルギーが必要なんだと思う。おまけに遠い。やっぱり「スープの冷えない距離」とかって、大事なんだろうな。ただ会うってだけで、気合いが必要だもん。なんとなく、遷移状態に突入する前に、反応エネルギーの曲線がもとの基底状態にかえっていくっぽい。そんなニオイがほのかに漂っている気がしてやりきれない。

恋愛を有機合成の話に例えるのはちょっと無理があるのかな。でも、授業を聞きながら、ぼんやりとそのことを考えていた。なんでかな、なんて、たくさん思っても考えても、何かを反省してみたりしても、わからないものはわからないのに。どこかに理由を見つけたくて、どんな話も関係あるみたいで。最低でも毎週末にはいつも電話をしていたのに、いきなり電話がないと哀しくて。何か希望の持てることを頭の中で必死で探したりしたら、前のうまくいかなかったやつが思い出されたりして、余計に哀しくなってしまった。もう、哀しいイメージしか浮かばない。

加えたエネルギーが不十分だったのかな、それか、エネルギーの加え方を間違えてしまったのかも。「ま、しゃーないわ」で笑って済ませられるように心の準備をしとかなきゃ。



ねえ ミルク またふられたわ
ちょっと 飛ばさないでよ この服高いんだから
うまくは いかないわね
今度はと 思ったんだけどな
あんたときたら ミルクなんて飲んでてさ
あたし随分 笑ったわね
いつのまにバーボンなんて
飲むように なったのよ
-----"ミルク32" text by 中島みゆき
今さら、わざわざ言うことでもないけど、
中島みゆきって、やっぱ天才やな。
満島ひかりもいい。

追記
After a while after writing this,
he gave me small chat, peacefully.
I was relieved from the bottom of my heart.

2017年10月6日金曜日

If I were not me.

I got into a fight with my mom about my life.
I am frustrated.
Everything, especially anything
about him are not going as I want.

Yesterday, I went out to drink
with a teacher and a pharmacist after EBM workshop.
Every time I go out to drink with someone,
he called me and checked
that I certainly get back to my house.
I was always annoyed with that.
I wondered why he does check all my time.
But without his calling yesterday, I felt lonely.
I felt that truly he's got away from me.
I got frustrated about
there were no phone and no text from him.
I got more frustrated about
that I expected him to care about me.
I felt that truly he'd abandoned me,
it came to me that I might be lonely in my future,
I got more lonely.
I did take it out on mom.

This morning, mom was so sleepy.
I hope I learned a lesson.



It makes the leaves on the trees fall.
Makes the hours in the day long.
Makes me wanna clear my head.
Find a little gap there and write the words to a song.
And I know that I'm still free.
Be anywhere that I wanna be.
Maybe get dressed up.
Wear something real pretty that you ain't never seen.
-----"Distance" by Emily King



After 38 years passed, I will never improve.
Myself gets annoying to me.
If I were not me.
I'd hoped so many time.
But I can't be some what is not me.
I have only to get along with myself.
I have only to accept all of myself.

I need his voice, his words, his warm now.
But there is just only a long distance.
Wanting to send him my true story,
Wanting him to know all of myself,
I'm writing here, secretly.

2017年10月5日木曜日

another one

I feel that we are gradually growing apart.
You are so busy that you can't find me in your heart.
And I am trying to get used to this distance.
It's not difficult.
Because it's only to make it back to the original.

It's like a synthetic organic chemistry.
The materials in stable state are too hard
to react without adding extra energy.
Although the more stable state is waiting,
it's difficult for them to get over a transition state.
We are in a long transition state.

You seem to be afraid of stepping into the next side.
Although you seem not to want to see me,
why do you want my voice or text every night?
Please don't get away if you want me.
Please don't put the reasonable reason
on your not doing anything.
Please don't get back to the stable state.
Adding more extra energy,
we can be in the more stable state, I think.



Feeling so confused.
You don't know what to do.
Afraid she might not love you anymore.
I know she says she does.
And hasn't lost your trust.
But who could that be knocking at her door?
-----"Another one" text by Marbriare Samuel Demarco

2017年10月4日水曜日

なかなかうまくいきませんな。

卵巣嚢腫の摘出手術から1ヶ月半。
あれから、右卵巣がまだ腫れているとのことで
心配しながら3度目の診察をしてきた。
1度目は生理中で、2度目は生理が終わった後、
3度目の今日はまた生理中にと、
排卵の具合を考慮しながらスケジュールを決めた。
今日は右卵巣の腫れはひいていて、
反対に左卵巣が腫れていた。
「たぶん、排卵の関係でしょう」と先生。
細胞診をしたいとのことで、
また来月、生理が終わったころに再診することになった。
なかなか長引くな。

それでも、恥ずかしながら主治医がかっこいいので許す。
It feels good that he touches.
I'm some kind of pervert...it's so embarrassing.









そろそろお勉強モードにならなければいけないので、恋愛モード休止。
そう思ったら、なんとなく気持ちが鎮まった。
11月にこっちに来たいと言っていたけど、
現実的には、テストがあまりに近すぎてそれどころじゃないだろうな、
というわけで、そのことを伝えた。
できれば前倒しで10月だとありがたいけど、
こんどはむこうの仕事が忙しすぎて、きっとそれはかなわない。
12月まで延びると、それはそれで気持ちが萎えてしまいそう。
むこうは、連絡し合えていれば大丈夫だと思ってるみたいだけど、
私は、お互いにフェイドアウトしてしまうんじゃないかなと思っている。
It's like a "virtual love", so it seems to be vanished away soon.
I'll try to keep, but I have no confidence.
Because I'm living in my own time, so as you.
けっこう残念だな。

ま、とりあえず勉強優先で、忘れたら忘れたときに考えることにしよう。

2017年10月2日月曜日

Something is missing.

The uncertain plan to meet each other in November
is almost vanished away.
Because I have to study so hard
for the important examination that can't be missed.
I'd like to meet him in October, but he can't adjust to me.
He said we can't do without pushing it back to December.
When I heard that, I thought our connection was almost over.

He always says "we don't have to go out of our way to meet".
If so, when we flow into each other?
Now, our connection is so light, that we can blow it off.
Without going out of our way to meet,
can our connection grow up to the thing that we can't ignore?
Without your wanting to meet me,
can our connection get more deeply involved?
I can't get our situation which connected only by phone and LINE.



I'd like to meet you as soon as possible.
But it will never be happened, without your will.

the sweetest moment.

You slept, as soon as the hearing my voice.
You say "your voice makes me sleepy" every time.
I know that's because you're always exhausted.
But I like to hear you say so in your sleepy voice.
The signs of your falling asleep also makes me sleepy.
It always makes me feel like slipping into your bed.
It always makes me feel like snuggling up.
It's the sweetest dozing.



It's been sweet and brutal long plays since I last had the will
To grow out of this clumsy epidermal thrill
Hexed and breathless lousy, lost in my despair
Can't shake off this itching, need to teeth and tear
His flesh will nurse my hungry compulsion back to health
Drippings of your pale see, sskin so usually fair
Doctor, here's my love, he cold, can you repair?
The bites left him empty, silently he stares
Oh oh, oh oh
Even when he not there
-----"Oh oh" by deluxe



Don't say "it's enough time you fall asleep".
Don't say "you don't have to wait".
I need the sweetest moment.

Monday is coming back.
You'll be so busy that you couldn't find me in your dream.

2017年9月29日金曜日

ホウ・レン・ソウ

During lunch break, you called me and
reported what you've done in this week.
I always wonder why you report what you've done,
but I realized the reason why you do so
when you said "That's all of my 'HO-REN-SO".
And I reminded that you'd said
"We need 'HO-REN-SO' each other,
because we are far away from each other".
Getting the reason, I relieved.
And you repeated to say the promise
to come here after two months.
I hope we'll go better.



そういえば、ちょっと前に「”ホウ・レン・ソウ”しよう」って
言っていたのを思い出した。
言われたときには、何言ってんだこの人って思ったけど、
そうか、だから、いつも、私にはよくわからないかもと
思う話でも、全部、全部話していたのか。
やっとわかった。
わかったよ。

2017年9月28日木曜日

0928_You don't know me.

いろいろ、「?」が転がりはじめる。
アホみたいに強火で煮詰めすぎて
どうやらコゲついたらしい。
ちょっと冷やそ。水に浸しとこ。

After 2 days without talking,
You called me and told me how hard you'd worked.
I couldn't understand
if that work had meaning a lot to you.
When I was thinking about that, you said me joyfully,
"You're just a girl, so you don't have to know anything."
Although I know you're so tired because of your job,
I realized how you think of me.
You may think of me just like your pet.
I hope that I was wrong.
Or, we may be happy leave it as like that.
Anyway, we should go slowly.



You don't know me at all.
My favorite, my interest.
My experiences, my dirty feeling,
my hurt, my desire, my reason.
How I used to be, how I used to feel, how I used to live.
You're just only watching my surface.
And I will never tell you until you ask.
Neither do I.

0927_つぶやき。

あー、やっぱりダメだ。
自信がなさすぎる。
このまま離れるのかな。
近づきすぎたために、
ほんの少しのオアズケにも焦ってしまう。
て、ホントにそれだけかな。
他にもっと近くの都合のいいヒトがいたかなとか
何かイヤなこと言ってしまったかなとか
そうであってもなくても、
まだ付き合ってないからカンケイないのに。
もう二度と会わないのかもなとか
やっぱり約束って流れるもんだねとか
拗ねた卑屈な気持ちがムクムクとココロを支配する。
昨日、今日と、送ったラインに
つなぎとめたい気持ちが溢れてちょっと哀れ。
ジブンのペースを守れる自信がそろそろもうない。
そろそろ撤退の準備でも始めるかな。



2017年9月27日水曜日

風化記念日。

昔、昔。
少なく見積もってももう15年以上も前のこと。
ジョニーという男友だちがいた。
当時ハヤったデザイナーズのショットバーで
ジョニーは働いていた。
ピンクとムラサキのビビッドな色が
シックに映えるオシャレな店には
なんとなく違和感のある、ガタイのいい男の子。
堂々と自信のある歩き方で
足の運び方の安定した人だなと思った。
私は初めて見たときに好きになった。

多いときは週に3回、少なくても週に1度は店に行った。
ジョニーは私とは別の大学の、私と同じ学年の学生。
話が盛り上がって、私たちは仲良くなった。
折しも就職氷河期ど真ん中。
ジョニーはカンタンに私に電話をかけてきて、
いつもいつも行く先を相談した。
あまりに電話をしすぎだと思ったのか、
シューカツが無事に終わったら、
ふたりで焼肉行って鴨川でボンヤリしようと
口ぐせみたいに言うようになった。
私はすごくうれしかった。
好きな人と毎日話のできる安心感と、
つらい現実の後のビッグなご褒美で
なんとなく気持ちがふわりと浮き上がった。

たくさんの企業にトライしたけれど、
人気のある企業しか目に止まらなかったのもあって、
私のシューカツ事情は困難を極めていた。
ジョニーの場合も同じくで、
自分たちは一体どうコマを進めるべきか延々と話し合った。
そのころ私が好きだった雑誌の編集部は東京にあった。
勇気を出して編集部に電話をしてみて、
白金の編集プロダクションに押しかけた。
押しかけたワリには書いた文章も持たず、
世間知らずにも手ぶらで、
それでも雇う代わりに
大阪にある他の雑誌の編集部を教えられた。
のちに縁があって、そこで働くことになるのだけど、
それはまた別の話。
このときは、当たり前にスゴスゴと帰らざるをえなかった。

ジョニーは東京の経営コンサルに就職を決めた。
「やっぱり、その会社を好きにならないと」と言った。
たぶん、そのころから、どちらからも電話をかけることはなくなった。

1月のある日、久しぶりにジョニーからの着信があった。
「研修で今から深夜バスで東京に行ってくる」
「週明けには帰ってくるけど、すぐに語学留学に行く」
「帰ってきたら焼肉行こう」
「あと、いっしょに東京に行かない?」
うれしかったけど、うらやましかった。
手を伸ばしてもらっている感じはとても悔しくて情けなくて、
もっとうらやましがられるようなところに就職しようと思った。
私は留年してシューカツを続けることにした。

ジョニーと話したのはそれが最後。
「帰ってくる」とジョニーが言ったその日は、
二巡目のシューカツのために東京行きの深夜バスに乗り込んだ。
焼肉になんか行かなかったし、二度と会うこともなかった。

もう本当に昔の話。
思い出ばかりが大きくなって、かなり美化されてしまっている。
もう何年も何年も、そのときの悔しい情けない気持ちと、
小さなプライドのせいで大事なものを逃してしまったという後悔に、
傷ついて沈み込んだ。
気持ちはどこにも向かず、どこにも動けなかった。
たくさんの人と知り合って、付き合った人もいるけれど、
そのときみたく傷つくのがこわくて、
ずっと、ココロにフタをしたまま今に至る。

たどたどしいけど、やっと書けた。
書いてみれば、たいしたことのないありふれた話だった。
これでようやく、風化したんじゃないかな。

2017年9月26日火曜日

C'est la vie

水の底でじっとしている。
水の外でうまく呼吸ができるのか
自信がなくて
ずっと水の底でじっとしている。
見上げれば真っ青なキレイな空。
沈み込んだ私にはとても眩しくて
直視することができない。
もうこのまま水の底でいるのかな。
それも悪くないかも。

遠くからおぼろげに声が聞こえる。
私を呼ぶ声、かすかに。
目を上げれば、さしこまれた大きな手。
私も手を伸ばして、触れてみる。
温かくて柔らかい大きな手。

つついてみて。
握ってみて。
引っ張ってみて。
ニオイを嗅いで。
なめてみて。
涙をぬぐったりして。
ベッドの代わりに寝そべったりもした。
手の上に寝転がって見た空は
恐れていたほど眩しくなくて、
手の先に何があるか知りたいと思った。

水面までのぼってみる。
空とキスをする。
水面にジブンを浮かべてみる。
久しぶりの空気と風。
髪がゆらゆらと揺れる。
そして大きく息を吸い込んだ。
水の抵抗のないここでは手も足も軽くて
沈み込んでいたココロがふわり、浮かんだ。

ぷくぷくぷく。

ひとつ浮かべば、ふたつめがぷかり、
ふたつ浮かべば、みっつめがぷかり。
想いはただ、ぷくぷくぷくと浮かぶ。
浮かんだ想いには、
ピンクやブルーやグレイがあるけど、
はじけて消えてなくなってくれなくて、
ふえつづけていく一方で、
ぷくぷくぷく、で埋まってしまった。
やがて空気がなくなって、
息苦しくて、もっと呼吸が早くなる。
どんどん、どんどん、
ぷくぷくぷく、ぷくぷくぷく。
ぷくぷくぷく、のごとに、
ジブンのことですらも
どんどん見えなくなっていく。

たったの一日、深呼吸をしなかったくらいで、
苦しくって、苦しくって。
たったの一日だったのに、
もうずっと、ずっと、空を想って、
もうずっと、ずっと、風を想っている。
昨日とはまた少し違う空を見たくて
水の中から、ぷくぷくぷく、の隙間を
もうずっと、ずっと、見つめていたのだ。

今日はどうか、深く呼吸をできますように。
どうか、少しラクになれますように。
想えば遠くなる、なんてことありませんように。
どうか、どうか。
ぷくぷくぷく。
お願いだから、どうか。
ぷくぷくぷく。

起きて。

なんでこの夜に、
そんなにのうのうと
眠ることができるのか
私にはよくわからない。
すっかり日課になった電話が
今日の一日ないだけで
私はこんなにも動揺しているのに。
ふたりの間をつなぐのは、
この電話とラインと、
遠く2ヶ月も先の約束だけで、
山積みの仕事や学校の課題やテストや
クルマで片道2時間半の
物理的な距離が私を不安にさせる。
そこにいるの、どこにいるの。
早く起きて。
起きて。

2ヶ月も先の約束だって
ホントかどうかわからない。
曖昧すぎる遠い未来の約束に
無邪気に寄りかかるなんてできない
あの悲しかったときみたいに、
約束を交わしたことすら
いつの間にか小さくしぼんで
塵になって風に飛ばされるのかも。
取り繕うように言ったことなんて
すぐに忘れてしまうんでしょ。
もう一度取り繕ってよ。
今度はうまくかわせるから。
ねぇ、起きて。
起きて。

私の存在の小さいこと。
今はまだ、ここにいるのに。
大きな声で叫んでみても
声なんて少しも届きはしない。
撫でるようなやり取りを
楽しんでいるだけでは、
ココロの奥底に届くはずもない。
想いがつのるほどに
無様で醜くなっていく。
そうなる前に逃げたくなるから、
悲しくなりそうなニオイからは
すぐに逃げてしまうから、
起きて。
お願い、起きて。

2017年8月14日月曜日

ひとりぼっち。

 ゆっくり深呼吸してくださいねー  ほら、もっと、吸ってー  だんだん眠たくなってくるからー  ほら、もっと、しっかり、吸ってー 
  て言われても、吐かないと吸えませんがね。狭い手術台の上で手足を固定されて、麻酔のマスクを装着されながらそう思っていたら、次の瞬間には手術が終わっていた。 
  終わりましたよー 
  天の声かと思っちった。朦朧とした頭はイマイチ整理もつかないまま、カラダは寝台に移されてゴロゴロと病室に運ばれたんだろう。目が覚めたら病室の天井が見えて、その視界のすみっこに母の顔があった。 
  あんたのね、嚢腫っていうの?、見せてもらったの。白くてツブツブしててね、あ、液体が入ってなかったから思ったよりちっちゃかったけどね、でもね、ほら、悪性だと、赤黒かったりして、あ、血管ができてるからね、いかにもワルモノって感じでしょ。あんたのはね、白くてね、なんか、イイコたちって感じだったのよ。 
  母は喜んでいた。いろいろ、悪くなかったらしい。よかった。私の年ごろにもなれば、卵巣嚢腫ってけっこうアルアルだし、そもそも何年も前から経過を知っていたので、それ自体はほとんど気にしてなかったけど、まさかの「悪性かもしれません」には、やっぱりちょっとドキドキしていた。「かもしれません」にどれほどの確率が含まれているか知らないけど、けっこう怖かった。「コトによっては、手術途中で方針を変えるかも。悪ければ、卵巣取り除くかも。ま、でももうひとつあるから」って一生懸命に言われて、いろいろ通り越して笑ってしまったくらい。だから、身構えていた分、不思議なことに、悪性じゃないとわかると、それはそれで少しガッカリな気もする。何がどうガッカリって、ホントに癌を患っている人からしたら、ケンカ売りたい感じだよね。でも、そう思った。そう思えるのも、そうじゃなかったからだし、よかった。ホント、よかった。 
  術後すぐに連絡をくれたのはなぜか印刷会社時代の元上司。もしかしたら広島に出張か何かで来ているってことだったのかも。「絶賛手術後です」と返事をして、いくつかやりとりをして、それで終わった。あと、学校の同級生とか先生たちからもいくつか連絡をもらって、それらには全部同じように「元気よー」のヒトコトと、トボけたスタンプを返したのだった。元気だけど、お腹の手術痕は痛い。「痛くない」っていろんな人につい強がってしまったけど、やっぱり痛い。笑うと痛い。咳払いすると痛い。咳すると痛い。くしゃみなんかサイアク。庇いながら寝たから、今度は腰が痛くなった。ホント、サイアク。「何か変わったことはないですか?」と、生存確認に来た看護師さんに聞かれたので「腰が痛いです」と答えたけど、それはマニュアルにないらしくスルーで、「じゃ、また何か変わったことや痛いところがあれば遠慮なくナースコールを押してください」と笑顔で帰って行った。私の「痛い」はひとりぼっち。仕方ないので、お腹と腰の機嫌を伺いながらモゾモゾと痛くない体勢を探す。見つけたら、もう二度とその体勢は変えたくないし、せっかく持ってきていた本や雑誌は手を伸ばしても届かないし、すっかりやることがなくなってしまった。こんなときの強い味方はケータイ動画で、『ツインピークス ザ・リターンズ』を一気に見て、かなり気分の悪い映像に、むしろ爽快な気分になった。 
  隣のベッドは家族を引き連れて早々に空いた。二人部屋だったので、今は部屋に私ひとりきり。仕切りのカーテンは仕舞い込んで、ブラインドから光が差し込むように角度を調節した。手術痕の痛みとタイミングを合わせて、ふぅ、うんしょ、と自分のベッドにもたれかかる。ブラインドの隙間から、こちらとは無関係に日常っぽい風景がのぞいている。