少なく見積もってももう15年以上も前のこと。
ジョニーという男友だちがいた。
当時ハヤったデザイナーズのショットバーで
ジョニーは働いていた。
ピンクとムラサキのビビッドな色が
シックに映えるオシャレな店には
なんとなく違和感のある、ガタイのいい男の子。
堂々と自信のある歩き方で
足の運び方の安定した人だなと思った。
私は初めて見たときに好きになった。
多いときは週に3回、少なくても週に1度は店に行った。
ジョニーは私とは別の大学の、私と同じ学年の学生。
話が盛り上がって、私たちは仲良くなった。
折しも就職氷河期ど真ん中。
ジョニーはカンタンに私に電話をかけてきて、
いつもいつも行く先を相談した。
あまりに電話をしすぎだと思ったのか、
シューカツが無事に終わったら、
ふたりで焼肉行って鴨川でボンヤリしようと
口ぐせみたいに言うようになった。
私はすごくうれしかった。
好きな人と毎日話のできる安心感と、
つらい現実の後のビッグなご褒美で
なんとなく気持ちがふわりと浮き上がった。
たくさんの企業にトライしたけれど、
人気のある企業しか目に止まらなかったのもあって、
私のシューカツ事情は困難を極めていた。
ジョニーの場合も同じくで、
自分たちは一体どうコマを進めるべきか延々と話し合った。
そのころ私が好きだった雑誌の編集部は東京にあった。
勇気を出して編集部に電話をしてみて、
白金の編集プロダクションに押しかけた。
押しかけたワリには書いた文章も持たず、
世間知らずにも手ぶらで、
それでも雇う代わりに
大阪にある他の雑誌の編集部を教えられた。
のちに縁があって、そこで働くことになるのだけど、
それはまた別の話。
このときは、当たり前にスゴスゴと帰らざるをえなかった。
ジョニーは東京の経営コンサルに就職を決めた。
「やっぱり、その会社を好きにならないと」と言った。
たぶん、そのころから、どちらからも電話をかけることはなくなった。
1月のある日、久しぶりにジョニーからの着信があった。
「研修で今から深夜バスで東京に行ってくる」
「週明けには帰ってくるけど、すぐに語学留学に行く」
「帰ってきたら焼肉行こう」
「あと、いっしょに東京に行かない?」
うれしかったけど、うらやましかった。
手を伸ばしてもらっている感じはとても悔しくて情けなくて、
もっとうらやましがられるようなところに就職しようと思った。
私は留年してシューカツを続けることにした。
ジョニーと話したのはそれが最後。
「帰ってくる」とジョニーが言ったその日は、
二巡目のシューカツのために東京行きの深夜バスに乗り込んだ。
焼肉になんか行かなかったし、二度と会うこともなかった。
もう本当に昔の話。
思い出ばかりが大きくなって、かなり美化されてしまっている。
もう何年も何年も、そのときの悔しい情けない気持ちと、
小さなプライドのせいで大事なものを逃してしまったという後悔に、
傷ついて沈み込んだ。
気持ちはどこにも向かず、どこにも動けなかった。
たくさんの人と知り合って、付き合った人もいるけれど、
そのときみたく傷つくのがこわくて、
ずっと、ココロにフタをしたまま今に至る。
たくさんの人と知り合って、付き合った人もいるけれど、
そのときみたく傷つくのがこわくて、
ずっと、ココロにフタをしたまま今に至る。
たどたどしいけど、やっと書けた。
書いてみれば、たいしたことのないありふれた話だった。
書いてみれば、たいしたことのないありふれた話だった。
これでようやく、風化したんじゃないかな。
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